『地球外生命体捕獲』

原題:“Altered” / 監督:エドゥアルド・サンチェス / 脚本:ジェイミー・ナッシュ / 製作:グレッグ・ヘイル、ロビン・カウイ / 撮影監督:スティーヴ・イェドリン / 美術:アンドリュー・ホワイト / 編集:マイケル・クローニン / 衣装:エミリー・ハリス / 音楽:アントニオ・コラ、エクシキオ・タラヴェーラ / 出演:アダム・カウフマン、キャサリンマンガン、ブラッド・ウィリアム・ヘンケ、マイク・C・ウィリアムズ、ポール・マッカーシー=ボーイントン、ジェイムズ・ギャモン、ミスティ・ローザス / 配給・DVD発売元:Amuse Soft Entertainment

2006年アメリカ作品 / 上映時間:1時間28分 / 日本語字幕:?

2007年12月15日日本公開

2008年3月26日DVD日本版発売予定 asin:B00111P6LU
公式サイト : http://www.amuse-s-e.co.jp/chimatsuri/altered.html

シアターN渋谷にて初見(2007/12/15)



[粗筋]

 忌まわしい記憶の刻まれた森に、連夜侵入していた三人の青年たちが、悲願を遂げる日が訪れた。デューク(ブラッド・ウィリアム・ヘンケ)が、コディ(ポール・マッカーシー=ボーイントン)の仕掛けた罠にかかって足を負傷するというトラブルはあったものの、遂に“獲物”を確保したのである。

 当初はオーティス(マイケル・C・ウィリアムズ)の農園に運ぶつもりだったが、最終的に彼らが向かったのは、そこからほど近い場所にあるワイアット(アダム・カウフマン)の自宅であった。深夜、突然訪問されたワイアットは、彼らの運び込んだものに恐懼する。布切れに包まれ、顔にガスマスクを嵌められたそれは、ワイアットたちが幼い頃、コディの弟を含む5人を攫い、コディ、デューク、オーティスをすぐに帰したのち、コディの弟を死に至らしめ、ワイアットに凌辱の限りを尽くした“宇宙人”であった。

 復讐を果たすつもりで生け捕りにしてきたが、その処置について、誰よりもこの宇宙人について詳しいワイアットを頼ってきたのだというコディたちに、ワイアットは激昂する。彼らは自らの体内に埋め込んだ信号によって互いに連絡を取ることが出来るのだ。ワイアットはすぐさま宇宙人のはらわたを切り裂き、発信器を見つけて始末するものの、押さえ込んでいたコディが手酷く傷を負ってしまう。

 彼らがそんな風に騒いでいるのを、たまたまワイアットの家に泊まっていた彼の恋人・ホープ(キャサリンマンガン)が聞きつけて姿を現したために、話は更にややこしくなった。何故、宇宙人にマスクを嵌めさせたのか――それは、彼らが目を見ることで相手を意のままに操る能力を備えているからなのだから。そうとは知らぬホープは、宇宙人と目を合わせてしまう……



[感想]

 ドキュメンタリー・タッチで恐怖に喘ぐ若者たちをリアルに描写した『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』を撮影した監督のひとり、エドゥアルド・サンチェスが久々にメガフォンを取って描いたのが“宇宙人”、とあっては、個人的に期待せずにはいられない。というわけで、単館の期間限定レイトショー、という恵まれない上映状況ながら、初日に劇場に馳せ参じたわけだが――あくまでも私にとっては、だが、期待に充分応えてくれる仕上がりであった。

『ブレア〜』ほど極端ではないにせよ低予算で製作されたのは明白で、舞台は森のなかと、バラックも同然の小さな家のみ。『ブレア〜』では終始カメラには映らなかった怪奇の正体をもろに捉えているため、特殊メイクアップやCG中心のVFXは導入されているものの、それとて決して資金が豊潤でなかったことは窺える。だが、その範囲内で盛り込める“お約束”は徹底して注ぎ込もうとしている、その心意気がいい。恐怖の見せ方や宇宙人の造型、そしてこの緊迫したなかでもしばしば散見されるユーモアのある会話など、これこそB級映画のお手本、とも言うべき要素が盛り沢山で、その「何が欲しいのかよく解ってますよ」ぶりが素晴らしいのである。

 しかしその反面、決して背景は脆弱でないのがいい。定番ながらも考えられた宇宙人の特性が、物語に緊迫感を齎している一方、回想という形でさえ描かれない登場人物たちの過去の存在が、彼らの行動を裏打ちしているのがよく察せられる台詞回しや心理描写によって、世界観に奥行きを齎している。登場人物たちの言動自体も、宇宙人にまつわるオカルトの知識をよく集めていることが窺え、そういう意味では説得力さえ備えている。

 そのうえ、奥行きがあるくせに、こうした作品群に馴染みのある目には、定番の要素の扱いが実にユニークなのだ。宇宙人の腹を裂いて手を突っ込み発信器を取り出す、という描写は残酷ながら登場人物が真面目であればあるほどその非現実性がクローズアップされるし、緊迫感溢れる場面でいちいち混ぜるフェイントも気が効いている。正直な人なら驚き、恐怖するかも知れないが、慣れ親しんでいるといっそユーモラスなのである。とりわけ宇宙人の特性や、終盤に登場するガジェットなど、どこまで本気なのか解らないのが余計にいい。終盤のある会話に基づいた、クライマックスでのある行動など、こうした映画においては定番と言えるだけに、実際の映像のおかしみが強調されているあたり、解ってやっている疑いも強いのだが。

 実のところ、原題と登場人物のある台詞から、これは日本人には馴染み深いアレの誕生物語を別角度から描こうとしているのでは、と予測したのだけど、そこを外されたうえ、曖昧な決着にしてしまったのがちょっと惜しまれる。ただこれは私の思い込みも手伝っていることだし、作品の趣旨からすれば暈かしたほうが正解と言えよう。

 かなり残酷な行動が多いうえ、見た目にも痛々しい描写が頻繁で、更に内容的にもマニアックであるために、迂闊に他人様に薦めることは出来ないものの、解る人にはこの上なく楽しい、極上のB級映画である。少なくとも私は大好きだ。