『オーシャンズ13』

原題:“Ocean's Thirteen” / 監督:スティーヴン・ソダーバーグ / 脚本:ブライアン・コッペルマン、デイヴィッド・レヴィーン / 製作:ジェリー・ワイントローブ / 製作総指揮:スーザン・イーキンズ、グレゴリー・ジェイコブズ、フレデリック・W・ブロスト、ブルース・バーマン / 撮影監督:ピーター・アンドリュース / 美術:フィリップ・メシーナ / 編集:スティーヴン・ミリオン,A.C.E. / 衣装:ルイーズ・フログリー / 音楽:デイヴィッド・ホルムズ / 出演:ジョージ・クルーニーブラッド・ピットマット・デイモンアンディ・ガルシアドン・チードルバーニー・マックエレン・バーキンアル・パチーノケイシー・アフレック、スコット・カーン、エディー・ジェイミソン、シャオボー・クィン、カール・ライナーエリオット・グールド、エディ・イザード / ジェリー・ワイントローブ&セクション・エイト製作 / 配給:Warner Bros.

2007年アメリカ作品 / 上映時間:2時間2分 / 日本語字幕:菊地浩司 / 字幕監修:アズビー・ブラウン

2007年08月01日日本公開

公式サイト : http://www.oceans13.jp/

TOHOシネマズ六本木ヒルズにて初見(2007/09/27)



[粗筋]

 かつての仕事で手にした大金により所有したホテルの赤字を補填するべく、盗みに入ろうとしていたラスティ・ライアン(ブラッド・ピット)は突然の電話に手を止め、仕事を放り出して、ルーベン・ティシュコフ(エリオット・グールド)のもとへ向かった。

 ラスティと同じくホテル経営に乗り出していたルーベンは、ホテル王ウィリー・バンク(アル・パチーノ)と組んで、ラスベガスでも最大規模となるホテルの建築に資金と労力を注ぎ込んでいた。だが、いよいよ建築が本格化し始めた矢先に、バンクにすべての権利を奪われていたことを知ったのである。ショックから心筋梗塞を起こし、どうにか一命は取り留めたものの、すっかり虚脱状態となってしまった。ダニー・オーシャン(ジョージ・クルーニー)を筆頭とするかつての仲間たちは怒りに駆られ、復讐することを決意する。

 いちどだけチャンスは与えた。もしルーベンに、彼が本来持っていた権利を返すというなら許すと告げた。だが、既に五つ星のホテルを複数所有するバンクは不遜な態度を貫き、オーシャンたちは計画を実行に移す。目的は金ではない――バンクを徹底的に絶望させること。盗みや騙しではなく、新しいホテルの仮オープンに潜りこみ、ダメージを与えるのだ。

 しかし、バンクが全力を傾注しているだけあって、ホテルの守りは堅かった。ダイス、スロット、新しいゲーム、ことごとくに細工を施すことは可能でも、仕上げにメンバーを脱出させるためにはセキュリティを解除せねばならないが、その周辺の情報がまるで掴めない。オーシャンたちはリビングストン・デル(エディー・ジェイミソン)のかつての仲間でセキュリティの専門家であるローマン(エディ・イザード)に協力を求めるが、グレコという男の設計したシステムだと判明すると、「自分の手には負えない」と断られてしまった。

 やむなくオーシャンたちは地震を発生させシステムを一時停止させる策を用いることにする。だが、ダイスの製造工場の操業停止などトラブルが頻発する中、遂に地震を擬似的に発生させるための仕掛けが壊れてしまった。苦慮した挙句、オーシャンたちは意外な人物に助力を求める……



[感想]

 日本では2002年に公開された第1作から5年にして早くも3作目となった、オールスター・キャストによるアンサンブル映画である。作っているのが、どんなジャンルの作品にも自在に対応してしまうスティーヴン・ソダーバーグ監督であるだけに、全体としては歪さを残しながらも娯楽としてきっちり仕上げているのが印象的なシリーズであったが、その美点は本作でも揺るぎない。ジュリア・ロバーツや前作で登場したキャサリン・ゼタ=ジョーンズが退いたのに代わって敵役として生きる伝説アル・パチーノと、ベテランながら未だに輝きを失わないエレン・バーキンを招き、彼らにも等しく見せ場――このシリーズの場合、“コケにされる場”と呼ぶべきか――を用意して、巧妙に楽しませてくれる。

 旧作からして計画は採算割れ前提だったり大掛かりすぎて検証すると破綻するパターンが続いていたため、もともと仕掛けの精度に期待するべきシリーズではないのは承知していたが、今回は特に物足りなさが残る。粗筋に記したように、今回は盗みの規模や知恵を競うというよりは相手の足許を掬い赤っ恥を掻かせることが至上命題となっており、そのために最初に説かれる青写真からあまり話が膨らんでいないのが最大の理由だろう。いちおう、止むに止まれぬ事情から、途中でダイヤも一緒に狙うことになるのだが、成り行き上準備段階がほとんど端折られているので、他の多くの計画に紛れてしまい、あまり印象は強くない。その趣向自体はけっこう派手なのだが、そこに至るまでに格別なトラブルがないせいもあって、取って付けたような感さえ齎すのがいささか気の毒でさえある。

 また、何だかんだ言いながらひとつの目標に向かって共同戦線を張っていた感覚の色濃かった旧2作に対して、目的は同じと言い条、個々の果たすべき役割がきっちり分かれてしまった本編では、一貫したユーモアが築きにくくなっており、大きな笑いに繋がりにくくなっている。ユーモアそのものは随所に細かく鏤めてあるが、それらがリンクする箇所はほとんどないし、前作のような――楽屋オチではあるものの――大仕掛けにも発展しないので、その意味でもカタルシスに乏しいのが難だ。

 とは言え、きちんと立ったキャラクターを活かす、という点では間違いなく前作よりも優秀だし、細かなやり取りの洒落っ気はくっきりとしている。ひたすら怪しげな黒幕として、バンクの前に姿をちらつかせては相手の感情を煽るオーシャンに、その片腕として様々な苦労を背負い込みつつも飄々とこなしていくラスティ、相変わらず坊ちゃん扱いされ実際どうも間の抜けているライナス、仲がいいんだか悪いんだか解らないがコンビネーションだけは確かな兄弟、謎のおとぼけをかまして訳の解らないまま事態を収拾してしまうバシャー、などなどお馴染みの登場人物たちの個性が、それぞれの持ち場でちゃんと効果を上げている。役者同士のやりとりを楽しむ、という見方からはほとんど不満の出ない仕上がりだ。

 と、極めて爽快な話作りをしているが、成り行き上、どうしても敵役以外にもうひとり気の毒な人物が出てしまっているのが弱い――と思っていたら、ちゃんと報いを用意しているあたりが憎い。娯楽というもののツボを丹念に押さえ、絶対的な一貫性よりも愉しさに奉仕する整合性を優先した、職人技と言える1本である。

 本編と入れ替わりに公開された『さらば、ベルリン』と対極にあるようでいて、その実いずれも映画というものへの造詣と情熱に裏打ちされていることでは共通している。こういう作品をほとんど相前後して撮ってしまうというだけで、尊敬に値することだと思う。