『こわい童謡 裏の章』

監督・脚本:福谷修 / 製作:二宮清隆、太田和宏、熊澤芳紀 / プロデューサー:伴野智、柳原祥広 / 撮影:福田陽平 / 照明:中村晋平 / 録音:治田敏秀 / 美術:黒川道利 / 特殊メイク:マイケル・T・ヤマグチ / 衣装:中村亮太 / VFXスーパーヴァイザー:柳隆 / タイトルデザイン:坂本サク / 編集:中山朝生 / 音楽:原田勝通 / レコード歌唱:玉城ちはる / 主題歌:キリト『拍動』(ブロウグロウ) / 出演:安めぐみ、松尾敏信、石坂ちなみ、小阪真郷、にわつとむ、玉城ちはる津田寛治多部未華子 / 制作プロダクション:東北新社クリエイツ / 配給:東京テアトル

2007年日本作品 / 上映時間:1時間19分

2007年07月28日日本公開

公式サイト : http://www.douyou-movie.jp/

テアトル新宿にて初見(2007/08/11)



[粗筋]

 1名を除いて合唱部員全員が殺害される、という凄惨な事件を契機に聖蘭女学院が廃校に追い込まれてから5年。潰れた校舎から夜な夜な童謡が聞こえてくる、という怪奇現象が報告されるようになったことを受けて、TVクルーたちが潜入取材を敢行した。

 このクルーの中でひとり浮いているのが、宇田響子(安めぐみ)である。彼女は東京音響研究社に所属する音響分析の専門家であり、問題の童謡の音源をはじめ、聖蘭女学院で発生した一連の怪事件にまつわる音声の解析を任され、現地での調査も行うことになっていたのである。

 現場に近づくなり響子は、周囲に漂う異様な気配を察するが、大半のクルーが興味本位の捉え方しかしないなかで、ただひとりディレクターの菱見(松尾敏信)だけが真剣に耳を傾けていた。そんななか、女生徒のひとりが飛び降りたという屋上で、女生徒が最後にかけた電話の音声との照合を行っていた響子は、にわかに豹変したクルーの比奈子(玉城ちはる)に危うく襲われかかる。

 比奈子の異変を契機に、クルーがひとり、またひとりと異常を来していく。潜入してしまった手前引き下がれないプロデューサーの矢代(津田寛治)は取材を強行するが、そんななかで響子は少しずつ、音源の調査から一連の事件に関する異様な共通項を導き出していく……



[感想]

 問題篇である『表の章』が単体としても、後編に先駆けた謎の提示としても雑だったためにあまり期待はかけていなかったが、案の定という感じである。

『表の章』で発生した事件をヒロインである響子が音響工学を用いて科学的に解明していく、というのがこの『裏の章』の大筋だが、そもそも完璧に『表の章』を観なければ皆目理解できない、というのはわざわざふたつに分けた意味をほとんど感じさせない。譲ってそれは不問に付すとしても、ろくに解明にもなっていないのがいちばんいけない。

 前作の時点で事件後との結びつきの緩さは指摘していたが、解決篇に及んでもそれらの関連性が明確にされることはなく、ただ“童謡”という点が通底しているのみ、というのはあまりに思考停止が過ぎる。というかそれは題名からして大前提なのであって、解明にはならないのだから。前作のときにも“こわい童謡”が事件に絡んでいる、という発想自体が恣意的に感じられたが、解決篇である本編でもその印象は払拭できなかった、というよりそのまんまなので悪印象が増してしまった。

 しかし、事件の解決に音響工学を用いる、というアイディア自体は悪くない。盗聴テープや、監視カメラに取り付けられた小型マイクの音声をその場で処理して、現場で何が起こっていたのかを立体的に再現するという趣向、またその場で童謡を逆さまに歌って逆再生するなどといったアイディアが齎す知的興奮はなかなかのレベルである。果たしてあの程度の機材であそこまで詳細な処置が、しかも短時間で可能なのか、などといった疑問も生じるが、その程度ならフィクションの嘘でとりあえず許容は出来る。少なくとも粗だらけの“童謡”の扱い方と比べれば格段に作品の柱として成立しているし、実質的に本編を支えているのはこうした音響絡みの趣向のみと言っても過言ではない。

 翻って、恐怖の演出や超常現象についての解釈の数々はほとんど説得力がない。本編の福谷修監督は決してホラー映画の経験値が低い人物ではないはずだが、素人かと思えるほど表現が稚拙だ。直前に行われたトークイベントでは、死屍累々と転がる女生徒たちの位置関係などにそうとうこだわったと話していたが、そんなことにこだわる以前にもっと根本的な怖さの表現について勉強すべきだったのでは、と思えてならない。この『裏の章』で唯一、まともに怖いと感じられたのはラストで用いられた趣向だったが、しかしこんなものはテレビの短篇ホラーでも繰り返し用いられているもので、月並み極まりない。

 童謡のネガティヴな解釈をベースにするという発想、その解決のために音響工学を導入した着眼点そのものは素晴らしいと思う。だが、終始それらを活かすことの出来なかった、失敗作と呼ばざるを得ない。表・裏双方で多彩な演技を披露した多部未華子の頑張りが却って気の毒に思えるほどだった。