冷たい都会の闇に消える。

 既に新しい作業が始まっておりますが、まだ切羽詰まる段階ではないので、今のうちに心残りを減らしておくべく映画鑑賞へ。
 本日の行き先は新宿武蔵野館。天気予報では今日から週末にかけてずっと雨模様、なので移動は電車。新宿武蔵野館は新宿駅とビルが直結しているので、傘も要らない……というわけではない。家と最寄り駅は直結はしてない。でも濡れる時間が最小限で済むのは有り難い。
 鑑賞したのは、フランス文学界の伝説ジョルジュ・シムノンを代表する名探偵を『仕立て屋の恋』のパトリス・ルコント監督が映画化、素性も解らない若い女性の死を巡るミステリメグレと若い女の死』(Unplugged配給)。本当はこれ、先週のうちに観るつもりでしたが、発熱に始まる体調不良で断念したので、早々にリヴェンジ。
 原作について触れたときも書きましたが、原作と犯行動機、手段が違うのは問題はない。ただ、本篇の筋では色々と物足りないのも事実です。何が、と書くとすぐに察しがつくので詳述はしませんが。
 しかし、雰囲気は極上です。陰鬱さも底に流れながら、ひたすら淡々と、身元不明の被害者の素性、人間性に糸を垂れる。ヴェテラン捜査官ならではの極めて冷静な観察に、自身の体調に対する不安も混じった優しさがちらつくあたりに、人間味も加わっている。
 クライマックスの趣向は現代ではむちゃくちゃ問題のあるやり口ですが、原作からあえて外した要素を別のかたちで補い、素っ気なかった結末に新たな情感を添える効果も上げている。
 誰にでもお薦め出来る傑作ではない、けれど情緒豊かな謎解きを好むひとには味わい甲斐のある1本。少なくとも私は堪能しました。

 また地下を通って新宿駅に向かい、駅の構内で食べるとか、自宅最寄りのコンビニで昼食を買って帰る、という選択肢もありましたが、この界隈に来るととりあえず麵屋海神を訪ねたくなる。時間が早かったお陰か、まだ空席が多く、すんなりと食事を済ませて帰宅。

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