大スクリーンから飛び出すジャック・ニコルソン。

 プログラム切替直後の火曜日は午前十時の映画祭11を観に行きます。たとえ台風が近づいてても……暴風雨の予報が出ればそりゃ断念するが。しかし行き帰りの時間に降りそうな予報になっていたので、移動は電車。
 いつものTOHOシネマズ日本橋にて鑑賞した今コマの作品は、スティーブン・キングの小説をスタンリー・キューブリックが映画化、閉鎖中のホテルの管理を引き受けた男が次第に狂気に犯されていくさまを、静かに迫るようなタッチで描いたホラー映画の金字塔『シャイニング 北米公開版〈デジタル・リマスター版〉』(Warner Bros.初公開時配給)。。これまでにも何度か観ようと思ったことはあったんですが、例によってなかなかタイミングに恵まれず、この映画祭のお陰でやっと観られた格好。
 ほんとに傑作。この、いっさい虚仮威しに頼らず、間とモチーフだけで恐怖を醸成する凄さよ。何気ないやり取りも、緊迫した音楽と余白のある描写で不穏さを演出し、中盤以降の爆発の予兆を仕掛けていく。少年ダニーの超能力がもたらす幻覚と、父親ジャックの妄想ともつかないヴィジョンが混沌となって、いつしか境の見分けがつかなくなっていく。幻想小説の文脈をなぞりながら、レベルの高い恐怖を表現してます。
 解っちゃいたけど、やっぱり出色はジャック・ニコルソンです。序盤、平静な状態のときでさえ既に危険な匂いを漂わせ、妄想か幻覚が入り混じり始めたあたりからどんどん狂気を増していく。ホラーと言い条、怪奇現象それ自体が登場人物を脅かすこの作品の恐怖のほとんどは、ジャック・ニコルソンが体現していると言っていい――雪に閉じこめられた、人気のない広大なホテル、というシチュエーションや美術も大いに貢献はしてますし、それも外せないからこそ本篇がとんでもない傑作たり得ているとは解っていても。
 前にこの作品を観よう、と考えたきっかけは、続篇『ドクター・スリープ』の劇場公開のときでした。予習がてら観るはずが、評価とは裏腹にあんまり成績が振るわず、上映回数が一気に減ってしまって、こちらも予習として『シャイニング』を観る機会を逸した、と記憶している……というわけで、たぶん私は近いうちに『ドクター・スリープ』も観るでしょう。

 当初の予報では、私の移動する時間あたりに雨のマークがついていたので、コレド室町の地下からまっすぐ駅に向かうべく、食事も地下にあるラーメン店・むぎとオリーブにて済ませる。
 うっかりして電車をひと駅乗り過ごし、このくらいの距離ならいいか、と地上に出て徒歩で乗換の駅へ向かったのですが……晴天になってました。なんか私、そういうところある。用心して折りたたみではない普通の傘を提げていろときほど、移動中は降らないのです。まあどのみち、いつものように自転車で移動してたら、たぶんどこかでずぶ濡れになってたでしょうし、きょうは仕方ない。

コメント

  1. […] 原題:“The Shining” / 原作:スティーブン・キング / 監督&製作:スタンリー・キューブリック / 脚本:スタンリー・キューブリック、ダイアン・ジョンソン /  […]

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