チャドウィック・ボーズマンの命が燃える瞬間を観た。

 午前中、完全にApple Watchとの格闘で潰してしまったので、本日の映画鑑賞は夕方から。まだ都内の映画館は休業中なので(いつまで続くんでしょうね)、もちろんネット配信です。
 あんまり迷っていても仕方ないので、先日のアカデミー賞に絡んだ作品から選びました。チャドウィック・ボーズマンが主演男優賞にノミネートされた話題作、伝説のブルース・シンガーを題材に、20世紀初頭の黒人たちの境遇を会話劇の形式で織り込んだドラママ・レイニーのブラックボトム』(Netflix配給)
 ……うん、これは確かに、オスカー級の演技でした。そりゃあアカデミー賞授賞式のスタッフもそのつもりで構成したくなるのも解る。
 会話劇ながらまるでラップのようにテンポが良く、陽気で軽快、なのに突如として黒人たちの歴史、一括りにされていても決して一様ではない人生が垣間見え、不穏に交わっていく。やはり出色はチャドウィック・ボーズマン演じるトランペッターの哀切窮まる絶叫ですが、タイトルロールであるマ・レイニーの身勝手のようでいて彼女なりの意志を持った言動や、バンドマンたちそれぞれの価値観にも個々の体験を滲ませ、実に味わい深い。
 鏤められた小道具が心情を巧みに象徴し、唐突なようでいて必然的な終幕の物悲しさ、苦々しさが細かな表現と共にいつまでも余韻を残します。この時代に黒人として生まれたひとびとの悲劇を描きながら、そこに愛と優しさがあるから、映画として美しく、そしてなおさら苦い。あんましいい喩えではない、と承知しつつ、上質のブラックコーヒーみたいな作品、と言いたくなってしまう。
 アカデミー賞ではヘア&メイクアップ部門と衣裳部門を獲得したに留まりましたが、間違いなく傑作。……これもまた映画館で観たかったけどね。大きなスクリーン、というよりは、ミニシアターで。

コメント

  1. […] 原題:“Ma Rainey’s Black Bottom” / 原作:オーガスト・ウィルソン / 監督:ジョージ・C・ウルフ /  […]

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