本当は午前十時の映画祭で観たかったなあ。

 ほんとーはだいぶ前から、きょう観る作品は心に決めていた。月曜日くらいまでは、もう動かせないつもりでいた――のですが、“SMT Membersの無料クーポン”という存在が、あれこれと狂わせた。このクーポンを無駄にしないためには木曜日を使わざるを得ず、当初、その時間を使ってするはずだった予習を、この土曜日にずらさざるを得なかった。
 予習しなければならないのは配信している映画なので、時間帯はいつでもいいし、自分の都合で一時休止することも可能。それゆえ今日は、墓参りに行く、という母に日中は付き合い、夕方から鑑賞する、という予定に組み替えたのですが、当番を代わって欲しい、という連絡が前夜に来て、母が出られなくなったため、またぞろ予定変更……まあ、こんどの変更は大した影響はない。実のところ、お目当ての映画は、行く予定の劇場では夜1回のみの上映、午前中に予習が出来れば、本命も観に行けるのです――が、疲れるからやりません。そっちは来週のうちに鑑賞します。

 移動時間がないため、午前中に観よう、と心に決めてても、エクササイズをやる程度の時間はある。しっかり身体を動かしてから、ゆっくりと鑑賞しました。一時停止抜きで――といきたかったんですが、途中で飲み物をこぼしてしまい、その始末に時間を使ったため、けっきょく昼食を挟んでの2部構成になってしまった。
 ともあれ、Amazon Prime Videoにて鑑賞した本日の作品は、若き才人オーソン・ウェルズが実在した新聞王ハーストをモデルに、メディアを牛耳りながらも次第に孤独に陥っていく男の姿を実験的な趣向で描き出した『市民ケーン』(ATG初公開時配給)。発表後80年経とうとしているいまでもオールタイムベストに上がってくる伝説の名作なので、こういう機会がなくてもいずれ観たかった1本です。
 なるほど凄かった。時間経過やフォロワーの傑作の存在によって見慣れた感はあっても、質の高さは80年経ついま観ても確か。ニュース映画を模倣した冒頭のリアリティ、新聞記者という視点を通して、段階的に、モザイク的に傑物の人生を再構築していく表現の実験性。画面のすべてに焦点が合うディープ・フォーカスという手法を本格的に用いたのが本篇だった、というのは、そういう作品が多くなったいま観ると凄みが感じにくいんですが、尋常でないローアングルや上空から降りてくるようなカメラワークなど、いまでもハッとさせられるような映像的工夫も多い。そして、「バラのつぼみ」というフレーズの謎解きを軸として観客の興味を惹きつつ、絶大な権力を獲得した人物のなかにある孤独を見事に剔出する語り口。これは確かに、映画史に残るのも頷ける傑作でした。
 残念なのは、画質がいまいち良くないこと……作品の古さを思えば致し方ないんですが、どうも保存やリマスターには恵まれてないのかも知れない。ブルーレイ版も割合最近リリースされてますが、そっちもレビューでは画質への不満が記されている。
 実のところ私はこの作品、午前十時の映画祭でかけてくれるのを信じて、他の手段で観るのを躊躇っていたのです。調べてみると、ファンからのアンケートも参考にプログラムが組まれた第10回には、かなりの投票があったことが窺える。権利的にも難易度は低そうなのに採用されなかったのは、満足のいくマスターが存在しなかったからなのかも。そう考えると、来年度に再開される第11回での採用も望み薄かな~……もっといいコンディションで鑑賞したい。

 まあ、何はともあれ、これで無事に予習は出来たので、来週はお目当ての1本を心置きなく鑑賞できます。楽しみだー。

コメント

  1. […] 原題:“Citizen Kane” / 監督&製作:オーソン・ウェルズ / 脚本:オーソン・ウェルズ、ハーマン・J・マンキーウィッツ /  […]

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