映画は、75年前の歴史を変えられるか?

 きょうも何を観に行くか、だいぶ悩んでました。出揃ってきた来週いっぱいのスケジュールを睨み、どれを今日に持ってくるか、前夜まで思案していたのですが、よくよく考えると今日にいちばん相応しい作品がひとつあった。
 訪れた劇場は、TOHOシネマズシャンテ。好天につきバイクで出かけました。例によって、最安値の駐車場が埋まることを考慮して、少しだけ早めに家を発ちましたが、無事に空きがあったので、余裕を持って行動出来ました。帰りには乗用車のスペースも含めぜんぶ表示が真っ赤になっていたあたり、いまは人出に比べて車両を利用するひとが増えてるのかも。
 鑑賞したのは、今年4月に亡くなった大林宣彦監督最後の長篇、尾道の海沿いにある映画館の閉館イベントに訪れたひとびとが物語の中に吸い込まれ、様々な時代の戦争を体験していく海辺の映画館-キネマの玉手箱』(Asmik Ace配給)
 なんとなく想像していたのとまるで違う内容だったことにまず度肝を抜かれました。なんだこれ。ずーっと喋りっぱなしだし映像加工しまくりだし、ロケで済みそうなところをわざわざ合成にして違和感を生んでるし。しかし、それが虚実の境を取り除き、どれがスクリーンの中の出来事なのか現実の歴史なのかが解らなくなる。幕末に命のやり取りを繰り広げる龍馬や中岡がいるすぐそばの部屋で利休が茶を点ててたり、その直後に宮本武蔵との対決が始まったり、と様々な見せ場がまさに玉手箱のごとくぎっしりと詰め込まれてます。
 正直、序盤はなにを描こうとしているのかが解らず置いてきぼりになるんですが、しかし支離滅裂のようでいて実のところメッセージは終始一貫している。ただただ、映画というものの存在がいつか平和をもたらすことを願っている。それだけのことを、映画好きの心を刺激する映像とシチュエーションばかりを積み上げて語りかけるこの熱量に圧倒されます。編出や合成の荒々しさには若さも見えるのに、その組み立てに映画作家としての蓄積をはっきりと完治させる、圧巻の仕上がりでした――映画に愛着のないひと、抽象的な描写を解釈するのが苦手なひとにはだいぶ辛いと思いますが、映画というものに何らかの思い入れがあるひとほど刺激を受けるのではないでしょうか。

 鑑賞したあと、駐車場に戻る前につじ田 御茶ノ水店に電話をかけてテイクアウトを注文、道すがら引き取って、自宅にて昼食を摂りました。ほんとに、他のお客に気を遣わずに済むので、新型コロナウイルスの騒ぎが収束しても続けてくれると嬉しい。

コメント

  1. […] 英題:“Labyrinth of Cinema” / 監督:大林宣彦 / 脚本:大林宣彦、内藤忠司、小中和哉 /  […]

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