『Go!プリンセスプリキュア Go!Go!!豪華3本立て!!!』

TOHOシネマズ六本木ヒルズ、アリーナの隔壁にプリントされたキーヴィジュアル。

キュアフローラといたずらかがみ』 監督:貝澤幸男 / CGディレクター:中沢大樹 / CG演出:日向学

『パンプキン王国のたからもの』 監督:座古明史 / 脚本:秋之桜子 / キャラクターデザイン&作画監督香川久 / 美術監督:須和田真 / 製作担当:山崎尊宗 / 主題歌:Every Little Thing / 挿入歌:花澤香菜 / 声の出演:花澤香菜、チョー、山像かおり諏訪部順一

プリキュアとレフィのワンダーナイト!』 監督&キャラクターデザイン:宮本浩史 / 挿入歌:上垣ひなた / 声の出演:上垣ひなた、中尾隆聖

共通クレジット 原作:東堂いづみ / オリジナルキャラクターデザイン:中谷友紀子 / 音楽:高木洋 / 声の出演:嶋村侑浅野真澄山村響沢城みゆき東山奈央古城門志帆新谷真弓佳村はるか / 配給:東映

2015年日本作品 / 上映時間:1時間15分

第28回東京国際映画祭パノラマ上映作品

2015年10月31日日本公開

2016年3月16日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video特装版:amazonBlu-ray特装版:amazon]

公式サイト : http://www.precure-movie.com/

新宿バルト9にて初見(2015/10/24) ※第28回東京国際映画祭にて上映



[粗筋]

『パンプキン王国のたからもの』

 いま話題の、パンプキンを材料にしたスイーツのお店を訪れた春野はるか(嶋村侑)たち“プリンセスプリキュア”の面々。噂に違わぬ味に舌鼓を打つが、はるかは届いた特大パフェの味に違和感を覚える。

 そこへ突如として、闇の者が操るゼツボーグが出現した。無事に撃退するものの、お店の屋上に現れた人影が操る術により、同行していた友達の七瀬ゆい(佳村はるか)を残して、プリキュア達は建物もろとも消失する。

 気づいたとき、はるかたちは異世界にいた。大臣のウォーブ(諏訪部順一)と名乗る男によってはるかたちは、その異世界の君主である王様(チョー)、お妃様(山像かおり)にお目通りする。ここはパンプキン王国と言い、現在プリンセスを募るコンテストを実施しているという。

 いつか最高のプリンセス――グランプリンセスになることを志すはるかたちは、コンテスト参加への誘いを受けるが、プリキュアのひとり、赤城トワ(沢城みゆき)は一連の出来事に不審を抱いていた。

 控え室に案内されたはるかはそこで、この世界に送り込まれたとき最初に遭遇した妖精たちがこそこそとどこかへ向かうのを目撃する。訝ったはるかと、プリキュアを支える妖精のパフ(東山奈央)とアロマ(古城門志帆)がそのあとを追うと、そこには高い塔の上に閉じ込められた、この国の姫君パンプルル(花澤香菜)の姿があった――

[感想]

 2015年、テレビシリーズとして11年目に突入した“プリキュア”の美点は、常に何かしらの実験精神を損なっていないことにある、と私は捉えている。テレビシリーズでは最初のうち、毎回のように人数を変えてみたり、新しいメンバーの登場の仕方に工夫を凝らし、過去の問題点や反省を踏まえた試みを重ねてきた。早いうちから3DCGによる作画を採り入れるようになり、劇場版では大ボスやクライマックスの戦いで用いる機会を増やし、テレビシリーズではエンディングテーマで導入をはじめて、2014年度の『ハピネスチャージプリキュア!』ではとうとう“バンク”と呼ばれる戦闘シーンの決めアクションで採用するようになった。他の作品からのフィードバックもあるのだろうが、継続的にその技術を研ぎ澄ませ、日本のアニメーションの表現力を向上させる役の多くを担い続ける、重要なシリーズになった、と言っていいのではなかろうか。

 それでも劇場版については、そろそろ幅も限られてきた――と思われたのだが、ここへ来て、ひとつの作品で3本立てにする、という趣向に打って出たことにまず驚かされた。しかも、最長となる50分のエピソードは通常通りのセルアニメーションだが、他の2本はすべて3DCGで製作する、という冒険を試みている。

 いずれこういう路線を模索してくるだろう、ということも、実は察しはついていた。前述のように本篇で3DCGの導入を進めていた事実に加え、3DCGのみで制作したミュージカル作品も限定的に発表していたのは、目標として3DCGのみでの長篇を視野に入れている、と推測してもおかしくはあるまい。

 3DCGによるキャラクターがしばしば陥りがちな“不気味の谷”の障害を乗り越え、人の手による描線の愛らしさに近いものを再現出来るところまで迫っており、既に技術的には長篇ひとつまるまる制作できそうなレベルにあるように見える。それが今回、同一シリーズの枠組みの中で3本立てにする、といういささか風変わりな企画に打って出たのも、まだ長篇まるまる1本を3DCG化してしまっては抵抗が大きいことを考慮してのことかも知れない。

 実験精神と本来の観客層への配慮は怠りないが、工夫を凝らすほどにどうしても粗が出てしまうのも必定ということなのか、惜しむらくはこの3作品はいずれも、ストーリー的には大いに難あり、と言わざるを得ない。

 子供が対象なので、ある程度は極端な展開は許されて然るべきだろうし、映画に相応しい見せ場を、きちんと筋道立てて組み立てるにはどうしても尺が足りない、というのも事実だろうが、それにしても本篇は話運びが不自然だ。『パンプキン王国のたからもの』はパンプルル姫をあえて閉じ込めておく必然性がまったくなく、そこから繰り広げられるドラマがことごとくぎこちなくなっている。『ワンダーナイト』などは、そもそもなにゆえレフィがあの状態でいたのか、どうして助けが必要なのか、といった骨があらかた抜けているので、そこにこだわってしまうとカタルシスがまったく得られない。

 ただその代わりに、いったい何を際立たせたかったのか、という点は非常に明確な作りをしている。『パンプキン〜』は幽閉された姫君と、彼女を巡るラストシーンの情感こそがいちばん描きたかった点なのだろう。『ワンダーナイト』については、ゲストヒロインの声優として起用された女の子の歌を採り入れつつ、3DCGでアクションを見せたい、という意思が窺える。ストーリー面での補強がやや心許ないのに、それらの見せ場がしっかり機能しているのは高く評価したい。

 また、そうした最大の焦点となる部分以外においても見所は多く、本来のターゲットである小さな子が飽きないような工夫も怠っていない。華やかでキャッチーな世界観、状況はシリアスでも立ち居振る舞いはコミカルな妖精たち。特に、高い塔の上に幽閉されたパンプルルとの意思疎通を図るくだりは大人でもけっこう楽しめてしまう。3DCGである『ワンダーナイト』はその自在のカメラワークを活かして本篇以上に派手なアクションを繰り広げるし、短篇『〜いたずらかがみ』は動きの楽しさを追求し、サイレントの面白さを充分に引き出している印象だ。

 この『劇場版プリキュア』シリーズは、テレビシリーズの良さをきちんと踏まえたうえでストーリーを洗練させていき、テレビシリーズを楽しめていれば大人でも唸らされるレベルのクオリティにまで高めていたが、近年は趣向についての試行錯誤を繰り返すあまり、ストーリー的にはやや物足りない状況が続いている。3本立てにしたことで今回は特にその嫌味が強くなってしまったのが惜しまれるが、しかしアニメーションとしての質を高めよう、という意欲は今回も十二分に感じられる。だから毎回、親子連ればかりの観客に混ざって観てしまうのだ私は。

関連作品:

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コメント

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