丸の内ルーブル閉館記念特別上映、兼イーストウッド2本立て。

 次の日曜日、8月3日をもって、有楽町マリオン新館にある丸の内ルーブルが27年の歴史に幕を下ろします。閉館までの9日間、ルーブルで上映されたワーナー・ブラザーズ映画の作品から9作品をチョイス、毎回入れ替えで上映する特別企画が催されることとなりました。最近、ここでかかる作品はたいていTOHOシネマズでかかってしまうので、すっかりご無沙汰となってますが、映画館通いが日常となった当初は年に数回訪れていた小屋ですので、記念に是非とも1本は観ておきたい。

 発表されたラインナップを調べてみると、敬愛するクリント・イーストウッド監督作品『マディソン郡の橋』が含まれていた。このところ止まっていたクリント・イーストウッド監督作品制覇計画、実は残り6作品のところまで来ていて、その数少なくなった未鑑賞作品のひとつでもある。こいつぁいい機会だから計画を再始動したい、ではそのために、いままで観た作品と『マディソン郡の橋』のあいだに何が残っているのか、改めて調べてみたら――『パーフェクト・ワールド』ただ1本でした。

 別に『パーフェクト・ワールド』に抵抗があったわけじゃないのです。むしろ、私にとっては初めて映画館で観たイーストウッド監督作品であり、思い入れがあるために、DVDが初めてリリースされた際にすぐさま購入したほどでした。しかし、なまじ手許にあるからこそ安心してしまい、映画館詣でやレンタルでの作品を優先してしまって後回しになってしまった。まさにこれこそ好機、と捉え、さきの週末に小分けにしてでも観るつもりだった――の、ですが。

 DVDが見つからない。

 辿り着いたのを幸い、早めに観るつもりで手近に置いておいた、のはなんとなく覚えているのですが、それから先送りにしているうちに、変なところに紛れ込んでしまったようです。よっぽど変なところに潜ってしまったのか、いくら捜しても発見できない。

 ……仕方がないので、日曜日、『ほん呪58』を借りるついでに、ブルーレイで買い直してしまいました。

 ただまあ、損をした、とは思ってません。もともと劇場で観たときも好きな作品でしたし、ブルーレイが出たときにいずれ買い直すつもりでいたのです。幸い、もう1500円程度になってますから、思い切って買ってきました。

 時間の都合もあり、昨晩のうちに1時間ちょっと観ておき、今朝残りを片付けるかたちで無事にパーフェクト・ワールド』(Warner Home VideoBlu-ray Disc)鑑賞。通して観たのは何年振りでしょうか。他にもたくさんの作品を鑑賞し、イーストウッド作品もかなり学んでから改めて観ると――恐ろしいくらいの傑作でした。これまでのイーストウッド流ロード・ムービーのエッセンスを詰めこみつつ、その描き方にはウイットと悲哀が満ちあふれている。これまで気にもしていませんでしたが、実はケネディ暗殺の頃のテキサスが舞台であり、あの歴史的事件の背後に埋もれていたかも知れない事件、というところにも重い意味がある。情緒とユーモアにも彩られていて、覚えている以上に隙のない名品。終盤、泣きそうになってました。

丸の内ルーブル場内の様子。 無事に座礁から立ち直ったので、夕方に心置きなくお出かけ。それにしても丸の内ルーブル、久しぶりだけどいつ以来かしら、と帰宅してから調べてみたら――8年振りでした。カート・ウィマー監督『ウルトラヴァイオレット』が最後、しかもその頃はネーミングライツを販売して、“サロンパス ルーブル丸の内”に一時的に改称していました。本日入場した際に貰った記念のクリアファイルに記載された上映作品一覧を参照すると、これ以降の上映作品も相当数、劇場で観ているわけで、私個人の話とは言え、如何にシネコンに客を食われていたのかが窺えようというもの。ルーブルの撤退も、経営母体である東急レクリエーションシネコンを映画興行の中心にしていく、と決定したからということですし、時流というものでしょうか。

 館内の展示やスクリーンの様子を写真に残しておいて、いよいよマディソン郡の橋』(Warner Bros.配給)鑑賞です。きょうび珍しくなったフィルム上映も有り難い、のですがさすがに時間が経っていて、かなりコマ落ちしているのは残念でしたけど。

 しかし映画としてはこちらも傑作。当時の大ベストセラーをベースにしていて、この頃にはもう読書家になっていた私は、ロマンスをアクション映画上がりの監督がうまく扱えるのか、という無責任な批評を鵜呑みにしていたのですが、今ならあれが如何にいい加減な憶測だったかが理解できる。当時、イーストウッド監督は既に充分な演出力を持ち合わせていて、純粋、かつ誠実なロマンスを心血注いで形にしている。事実上ふたり芝居なのですが、お陰でイーストウッドメリル・ストリープの演技が存分に堪能できますし、それを子供たちの視点から捉えなおすことで、彼らの誠実さと真情とを観る側に伝える手管も見事。そしてクライマックス、計算され尽くした映像の美しく切ないこと! 未だに原作は読めていないのですが、イーストウッド監督がこの物語を完全に理解し、映画として昇華させた、というのは断言していいと思う。

 クロージング記念上映、他にも折角なら観ておきたい作品もあるんですが、しかし他の予定と合わせて考えると、もう1回来るのはちょっと厳しそう。私にとってはこれが見納めとなりそうです。ラインナップを眺めて気づいたことですが、どうやら私はこの劇場、オープンの翌年には『太陽の帝国』を観に来ていた可能性がある。映画道楽にハマる以前から縁があった、と思うといっそう感慨深い。長らく、お世話になりました。

コメント

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