『プリティ・ウーマン』

TOHOシネマズ六本木ヒルズ、エスカレーター脇に置かれたポスター。 プリティ・ウーマン [Blu-ray]

原題:“Pretty Woman” / 監督:ゲイリー・マーシャル / 脚本:J・F・ロートン / 製作:アーノン・ミルチャン、スティーヴン・ルーサー / 製作総指揮:ローラ・ジスキン / 撮影監督:チャールズ・ミンスキー / プロダクション・デザイナー:アルバート・ブレナー / 編集:プリシラ・ネッド、ラジャ・ゴスネル / 編集:マリリン・ヴァンス / キャスティング:ダイアン・クリッテンデン / 音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード / 主題歌:ロイ・オービソン“Oh, Pretty Woman” / 出演:リチャード・ギアジュリア・ロバーツ、ローラ・サン・ジャコモ、ラルフ・ベラミー、ジェイソン・アレクサンダー、ヘクター・エリゾンド、エリノア・ドナヒュー、アレックス・ハイド=ホワイト、エイミー・ヤスベック、ジェイソン・ランダル、ハンク・アザリア、ナンシー・ロック、ウィリアム・ガロ / 配給:タッチストーン映画×Warner Bros. / 映像ソフト発売元:Warner Home Video

1990年アメリカ作品 / 上映時間:1時間59分 / 日本語字幕:古田由紀子 / PG12

1990年12月7日日本公開

2010年12月22日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazonBlu-ray Discamazon]

新・午前十時の映画祭(2013/04/06〜2014/03/21開催)上映作品

TOHOシネマズ六本木ヒルズにて初見(2013/05/10)



[粗筋]

 造船会社モース社買収のためにロサンゼルスに滞在していたエドワード・ルイス(リチャード・ギア)は、パーティの席から戯れに自分で車を運転してホテルに戻ろうとして、道に迷ってしまう。難渋して停めた道端で、エドワードに声をかけて来たのは、街娼のヴィヴィアン・ワード(ジュリア・ロバーツ)だった。

 別に女を買う考えはなかったエドワードだが、予想できない振る舞いをするヴィヴィアンに興味を惹かれ、エドワードは彼女を引き留める。折しも、同居人のキット・デ・ルカ(ローラ・サン・ジャコモ)が家賃に残しておいたお金を使い込んでしまった直後だったので、ヴィヴィアンはこの幸運に喜んだ。

 一夜限りの契約のはずだったが、翌る日、思わぬ展開に発展する。エドワードの会社の顧問弁護士フィリップ・スタッキー(ジェイソン・アレクサンダー)がその日に予定されているモース社の社長ジェームズ・モース(ラルフ・ベラミー)との会食にひとりで赴かず、誰かを同伴するよう提案した。そこでエドワードは、ヴィヴィアンに1週間の独占契約を申し出る。地味で品のいいドレスを購入し、1週間のあいだ、エドワードのもとで“従業員”となる。破格の契約に、ヴィヴィアンは更に欣喜雀躍した。

 エドワードが仕事に出ているあいだに、ヴィヴィアンはドレスを購入しに町に出るが、そこで改めて“現実”を思い知る。彼女のように、見るからに“商売女”然とした服装の人間は、ブティックの店員からも色眼鏡で見られるのだ。悄然としてホテルに戻ると、今度はホテルの従業員にまで足止めをされる。幸いに昨晩、エドワードが彼女を伴っていたことを記憶していたホテルの支配人バーニー・トンプソン(ヘクター・エリゾンド)が、最大限の計らいを彼女に施す。馴染みのブティックに頼んで彼女を丁重に扱わせ、マナーを知らない彼女にディナーでの振る舞いの手解きをした。

 その晩、ホテルに戻ったエドワードは、ヴィヴィアンの変貌ぶりに驚く。すぐさまモース親子との会食に臨むが、しかし会食は決して和やかには進まなかった……

[感想]

 最近でこそあまり抵抗はなくなったが、以前はいわゆる“ロマンス”がとにかく苦手だった。コメディとしての側面が押し出されているなら兎も角、やたらとファッショナブルな部分や流行性が強調され、ストーリーがお座なりにされていそうな作品には、あまり食指を誘われなかった。もし今回、『新・午前十時の映画祭』のラインナップに加えられていなかったら、恐らく本篇にはとうぶん接することがなかっただろう。

 いざ観てみると、如何にも当時らしい、企業買収ややけに華々しいライフスタイルの描写にちょっと苦笑いしたくなるが、しかしさすがにこの『新・午前十時の映画祭』に選ばれるだけあって、質は非常に高かった。

 決して話としては複雑なものではない。違う世界の人間が巡り逢い惹かれ合い、そしてハッピー・エンド、と乱暴に括ってしまうことが出来るが、その過程に嫌味や不自然さがない。出逢う部分こそ偶然の色彩が濃いが、その後の展開、ふたりの行動に、運命に委ねるようなところがないのが、ロマンティックでありながら現実的な雰囲気を醸している。

 まず、エドワードは最初から、ヴィヴィアンの“王子様”になるつもりは毛頭ない。彼女の人柄を気に入ったのは間違いないだろうが、彼女を1週間独占したのはあくまで取引のためだった。公の場に足を運ぶのに、エスコートする女性の存在が有効に働くから、という打算のほうが、関心より大きかったはずだ。

 対するヴィヴィアンも、エドワードのような金持ちと縁が持てたことを喜んではいるが、しかしお伽噺のようにあっさりとお姫様扱いはされないし、そういう立場に甘んじられる、とも考えていない。エドワードの指示通りにドレスを買おうとして門前払いを受けて意気消沈し、そのためにわざわざテーブルマナーを学んで、エドワードの“要望”に応えようとする。

 お互いに、決して色恋からではなく互いに興味を惹かれて“契約”し、その過程で男女として惹かれ合っていく。だがどちらも、お伽噺など信じていないから、常に距離感を意識し、過剰に踏み込むのを避けるのだが、結局は恋愛感情に結びついていく。そういう常識感覚が一定のレベルで備わっているので、不自然さがないし、近づいていく過程に嫌味もない。慎重な態度と、大人としての分別、そのうえに妥協、変化、理解があるから、ロマンスとしても受け入れやすい内容になっているのだ。

 基本的にメイン2人に焦点を合わせ、周囲に話が散らばらないことも本篇の美点だが、脇役にもきちんと意味があり、一定の存在感があることもまた本篇のクオリティに貢献している。エドワードと相棒スタッキーや、交渉相手であるモース社長との関係性もなかなかに興味深いが、本篇でいちばんニヤリとさせられるのは、ホテルの支配人バーニーだろう。如何にもプロのホテルマン然とした振る舞いをする人物で、当初は品格に見合わない、と思われるヴィヴィアンを明らかに色眼鏡で見ているが、必要があって“レディ”として着飾り振る舞おうとする彼女に手助けをしたあとは、だんだん保護者のような眼差しになっていくのがおかしい。ホテルの従業員たちの態度は全般に観ていて楽しいのだが、とりわけ支配人の反応はなかなかに見物だ。

 この支配人の立ち居振る舞いも含め、エンディングに向かって細かな布石があって、それによって結末の感激、トキメキを膨らませる手管がまた見事だ。何気ない会話、ちょっとした付け足しめいた設定が、終盤でうまく結実する。少々出来過ぎているようにも思えるが、過程の自然な成り行きが、このファンタジーめいた終幕をひとときの夢としての快さを演出しているのだ。

 企業買収という背景やファッションの特徴などから、どうしても次第に古びていくのは否めないが、その時代に根ざしつつ、オーソドックスかつ堅実に築きあげられた本篇は、ひとつの端整な“古典”として生き延びていきそうな気がする。

関連作品:

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