『ネスト』

ネスト [DVD]

原題:“The New Daughter” / 原作:ジョン・コナリー / 監督:ルイス・ベルデホ / 脚本:ジョン・トラヴィス / 製作:ポール・ブルックス / 製作総指揮:スコット・ニーメイヤー、ノーム・ウェイト / 共同製作:ドン・カート、ブラッド・ケッセル、ガイ・A・ダネラ / 撮影監督:チェコ・バレス,A.M.C. / プロダクション・デザイナー:クリス・シュライヴァー / 編集:トム・エルキンズ、ロブ・サリヴァン / 衣装:ダナ・キャンベル / キャスティング:アイド・ベラスコ,C.S.A. / 音楽:ハビエル・ナバレテ / 出演:ケヴィン・コスナー、イヴァナ・バケロ、ノア・テイラー、サマンサ・マシス、ガトリン・グリフィス、ジェームズ・ギャモン、エリク・パラディーノ、サンドラ・エリス・ラファーティ、マーガレット・アン・フローレンス / 配給:Presidio / 映像ソフト発売元:Happinet

2009年アメリカ作品 / 上映時間:1時間48分 / 日本語字幕:?

2011年1月22日日本公開

2011年5月2日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video:amazon]

公式サイト : http://www.facebook.com/nestmoviejp

DVD Videoにて初見(2011/06/07)



[粗筋]

 妻に突然離婚を突きつけられた作家のジョン・ジェームズ(ケヴィン・コスナー)は、どうにか親権を勝ち取ったふたりの子供と共に、郊外に購入した新居へと引っ越した。息子のサム(ガトリン・グリフィス)は陽気だったが、母親に捨てられた、という想いを抱くルイーサ(イヴァナ・バケロ)の表情は芳しくない。とはいえ、今後はこの家族3人で暮らしていかねばならなかった。

 奇妙な気配は、転居最初の夜から感じていた。周囲から、異様な物音が響く。置きっぱなしにされていたピアノの中には弾をこめたライフルが隠されていて、危うく事故を起こすところだった。そして、一緒に連れてきた飼い猫のマーマレードは、家から迷い出た翌日、無惨な屍体となっていた。

 そして、次の変化はルイーサの身に訪れた。ある晩、泥だらけで家に戻るが、ジョンに何をしていたのかと訊ねられても応えない。床に入った彼女の様子を見に行くと、その手には奇妙な藁人形を握りしめていた。

 もともと反抗期に入っていたルイーサだったが、この頃からジョンに対する態度がいっそう頑なになっていった。やがて彼は、娘の変化がこの不気味な家と関わりがあるのでは、と考えるようになっていく――

[感想]

 監督はスペインで生まれた、P.O.V.スタイルによるホラー映画の佳作『REC/レック』にて共同脚本のひとりとしてクレジットされていた人物である。

 自身が演出に加わっていたわけではないが、その呼吸はわきまえていたと見え、本篇のおぞましい空気感の演出はなかなか堂に入っている。物音の表現や、ごくごく序盤に画面の片隅の暗がりを“そのもの”が大胆に過ぎっていく様を見せる手管が巧妙であるし、少々特異な“異物”の生態を、別の馴染み深いもので説明し、その一致の薄気味悪さを恐怖に繋げていくなど、描き方がおおむね洗練されている。

 ハリウッド映画ではよくある手法ながら、家族の問題と恐怖の蓄積を重ねて見せるのも巧い。こういう状況でなくても不思議でない娘の父親に対する反発、ギスギスした空気の中で出来るだけ陽気に振る舞おうとする息子。ネットで子育ての方法を検索し、子供たちが入った学校の教師に悩みを打ち明ける父親の姿など、普通にありそうな家族のドラマに、異様な出来事が絡みあって不穏なハーモニーを奏でる。全般に凄惨な場面を直接見せないのは、主演がケヴィン・コスナーという大物であることにも配慮し、レーティングに気遣った結果と思われるが、その枠の中で可能な限りホラー映画としての肝を味わわせようとするあたりには、ホラー映画を色々と観てきたマニアの目からも好感が持てるし、不慣れな層にもアピールしうる仕上がりである。

 ただ惜しむらくは、終盤の展開だ。趣向としては間違っていない――多分に説明不足に陥っているきらいはあるが、ホラーの定石を守っているし、過剰に語りすぎていないことも、わきまえていることを窺わせる。

 問題は、家族の採り上げ方や、節度を保った残酷描写など、マニア以外の観客にも気を遣った描写と、この終盤の展開が相容れないことにあるのだ。こういう描き方から、一般的な観客は恐らく明瞭なハッピーエンド、或いは目覚ましいサプライズを期待するだろうが、本篇の結末にはそのどちらもない。

 この題材を扱ったホラー映画としては、若干描写に粗さも見いだせるものの、極めて堅実に作られている。ただ、その堅実さが、呼び込もうとした観客の求めるものに必ずしも合致していないのが本篇の不幸かも知れない。

関連作品:

コーリング

REC/レック

パンズ・ラビリンス

チェンジリング

[リミット]

アパルーサの決闘

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