『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地争覇』

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地争覇 デジタル・リマスター版 [DVD]

原題:“黄飛鴻之三:獅王争覇” / 監督:ツイ・ハーク / 脚本:ツイ・ハーク、カーボン・チョン、チャン・ティンスェン / 製作:ツイ・ハーク、ウー・セイエン / 製作総指揮:レイモンド・チョウ / 武術指導:ユエン・ブン / 音楽:ウー・ワイラップ、ツイ・ハーク / 出演:ジェット・リーリー・リンチェイ)、ロザムンド・クワン、ション・シンシン、マク・シウチン、ラウ・シュン、チウ・ジン、ジョン・ウェイクフィールド / 配給:東宝東和 / 映像ソフト発売元:Paramount Home Entertainment Japan

1992年香港作品 / 上映時間:1時間47分 / 日本語字幕:?

日本公開時期不明

2011年7月8日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazonBlu-ray Discamazon]

DVD Videoにて初見(2011/05/03)



[粗筋]

 清朝末期の中国。時の支配者西太后は西欧列強の脅威に晒される現状を憂い、李鴻章総督に一計を求めた。李は、獅子舞を被った武術家たちに競わせる“獅王争覇”の大会を催し、富国強兵を図ることを提案する。

 その頃、ウォン・フェイホン(ジェット・リー)一行は、フェイホンの父(ラウ・シュン)のもとを訪ねるべく北京に降り立っていた。フェイホンと仲を深めていた叔母のイー(ロザムンド・クワン)との結婚の許しを得るためであったが、ウォン家が営む工場に着いてみると、そこは無惨に荒らされ、フェイホンの父は負傷していた。

 獅王争覇は既に北京の武術家たちを一触即発の状態に追いやっており、とりわけ強引な手段を用いて勝利を目論む太平号一派のチャオが、実力者であるフェイホンの父を予め潰すために襲撃してきたのである。幸いフェイホンの父は大事に至ることはなかったが、様々な流派が混戦する有様を目にしたフェイホンは仲裁に入り、李鴻章に対して意見書を提出することを提案する。

 意見書を携え紫禁城を訪れたフェイホンだったが、しかし帰途に就こうとしたとき、現地の人力車を仕切っていたチャオの部下たちの襲撃を受けた――

[感想]

 その後テレビドラマにもなった人気シリーズの第3作にして、ジェット・リーが演じる黄飛鴻、ひとまずの最終作である。ツイ・ハーク監督のシリーズと離れて独自にウォン・フェイホンを演じたり、紆余曲折ののち、アメリカに渡ったという設定で復活も遂げているが、初期シリーズの完結篇と見ていいだろう。

 とは言い条、本篇はそんな背景とは関わりなく、いい意味でマンネリズムを保った仕上がりとなっている。華々しくも不穏さをたたえたプロローグに、相も変わらぬ微妙な関係を築いているフェイホンとイーにフー、複数の勢力が絡みあってのアクション場面に痛快さと時代の重みが漂う結末など、前2作で披露した魅力をきちんと継承している。

 そのうえでストーリーにもアクションにも趣向を凝らし、本作ならではの見せ場を設けている。特に重要なのは、ウォン・フェイホンを題材としたフィクションではお馴染みの弟子のひとりであるらしい新キャラクター・鬼脚だ。

 最初は太平号の尖兵として、実力者であるフェイホンの父に対しても臆さぬ戦いぶりを見せ、イーを拉致しようとする現場ではフーと壮絶な追跡劇を繰り広げる。だが、負傷して使い物にならなくなった途端に太平号の師範チャオに軽んじられ、放逐された挙句にフェイホンに救われると、フーのよき友となり、更にクライマックスでは負傷したフーに替わって新たな師フェイホンのサポートを見事に努めるのだ。決して大きな見せ場はないが、クライマックスでの、フェイホンと実に息の合った立ち回りを示すあたりではちょっとした感動さえ味わわせてくれる。

 アクションの切れ味も相変わらず素晴らしいが、クライマックスに“獅王争覇”という舞台を選んだのが見事だった。複数で獅子を担いで、如何に早く櫓の上の札を奪うかを競う。被り物をしているがゆえに、その中から槍や火炎放射で競争相手を蹴落とそうとする者がいるなかを、フェイホンたちが呼吸を合わせて舞い踊る。崩れかけた櫓を用い、本シリーズお馴染みの不安定な足場での格闘もきっちりと組み込んでくるあたりがまた憎い。

 前作に比べると悪党があまりにも安易な悪党であるために、深みはやや損なわれた感はあるが、それでも戦いを収めたあとでフェイホンが行う演説は実に熱く響く。

 この時点でジェット・リーの降板が決まっていたかは知らないのだが、結果的に第1作プロローグの獅子舞と対を為すアクション・シーンを最後に配することになり、3部作として綺麗に纏まった感もある。スタッフ、キャスト間に確執があったらしいことは残念だが、観る側としては、どうしてもこのあとに続く作品の出来に納得がいかないのであれば、ここでシリーズはいちど完結した、と捉えるのもいいのではないか、と思う。

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コメント

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