『プロジェクトA』

『プロジェクトA』at大成龍祭2011 プロジェクトA デジタル・リマスター版 [DVD]

原題:“A計劃” / 監督、脚本&主演:ジャッキー・チェン / 脚本:エドワード・タン / 製作:レナード・K・C・ホー / 製作総指揮:レイモンド・チョウ / 撮影監督:チャン・ユイジョウ / 音楽:マイケル・ライ / 出演:ユン・ピョウ、サモ・ハン・キンポー、ディック・ウェイ、イザベラ・ウォン、ラウ・ハクスン、クワン・ホイサン、タイ・ポー、マース、ワン・ウェイ / 配給:東宝東和 / 映像ソフト発売元:Paramoount Home Entertainment Japan(鑑賞したものはUniversal Pictures Japanより発売)

1984年香港作品 / 上映時間:1時間45分 / 日本語字幕:?

1984年2月25日日本公開

2010年12月17日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazon]

DVDにて初見(2010/11/18)



[粗筋]

 イギリス統治下に置かれていた20世紀初頭の香港。海上警察の任務は近年繰り返す海賊から海運の平和を保つことだったが、失態続きで一向に尻尾を掴めない。班長を務めるドラゴン(ジャッキー・チェン)たち一同は、ジャガー隊長(ユン・ピョウ)たち陸上警察と酒場で乱闘騒ぎを起こすなど、トラブルも絶えなかった。

 そのうえ、いざ取締に赴こうとした矢先、海上警察の船が一斉に爆破され、瞬く間に彼らは機動力を失ってしまった。そのため海上警察は陸上警察に統合され、ドラゴンたちはジャガー隊長の指揮下に入ることになる。

 全体に楽天的な気風の元海上警察の面々は、陸上警察流の厳しい指導になかなか適応しようとせず、ジャガーの訓練にささやか――とは言い難い抵抗を試みたり悪戯をしかけたりする。

 そんななか、重犯罪者があるホテルに匿われているとの情報を受けて、ドラゴンたち元海上警察の面々はジャガー隊長と共に踏み込んだ。しかし気づけば大乱闘状態となり、ホテルの支配人によって呼び出された総監に叱責され、謝罪を強要されたドラゴンは、バッヂを投げ捨てたあとで強引に犯人を引きずり出し、ジャガー隊長に引き渡してその場を立ち去る。

 折しもその現場に、ドラゴンとは旧知の仲であるコソ泥のフェイ(サモ・ハン・キンポー)が居合わせていた。フェイはドラゴンに、ある人物から警察のライフルを横取りするよう依頼されたことを話す。どうやら警察と関係の深い人物が海賊と内通し、情報や物資を調達しているらしい。衝動的に警察を辞めたものの、正義感の強いドラゴンは、凶器が海賊に渡らぬよう、フェイと結託した――

[感想]

 世界的に見ても、日本でのジャッキー・チェン人気は飛び抜けて高い。最盛期には、地元であるはずの香港に先駆けて日本で公開するため、編集をわざわざ日本で行っていたこともあるという。本篇はそんなジャッキー・チェンの代表作のひとつとして挙げられることの多い1篇だ。

 傑作であることは疑いない。だが率直に言えば、お話自体はかなり雑だ。

 個々の出来事やアクションシーンがうまく繋がりあっていない。酒場での乱闘にしても路地裏の自転車による追いかけっこにしても、そのアイディアを優先して組み立てられているため、孤立してしまっている。例えば、登場人物それぞれの特技や、事件に関する要素を絡めて、アクションにカタルシスをもたらす、という工夫がないせいだ。

 アクションとの絡みを抜きにしても、人々の行動が行き当たりばったり、杜撰な傾向があって、呆気にとられることが少なくない。ホテルでの乱闘のくだり、逮捕令状が出ているならその写しぐらい存在していそうなのに、そのあたりが考慮されず諍いに発展しているし、クライマックス手前でのドラゴンの説得であっさり状況が一転してしまうのも安易すぎる印象だ。20世紀初頭の香港、海賊相手の戦い、といった舞台や設定は興味深いのに、そこをうまく掘り下げていないので、背景として充分に機能できていないのだ。

 だが、観ていてそういうことがどうでもよくなるくらいに、本篇のアクションは素晴らしい。ジャッキーのみならずユン・ピョウ、そしてサモ・ハン・キンポーという、香港が生んだアクション俳優3人が見せる切れ味のいい動き、椅子や梯子、自転車など小道具を用いた趣向溢れるアクション・シーンの数々は、唐突さやその場限りという整頓の悪さを抜きにしても見応えがある。そのあたりにあるものを駆使し、椅子を凶器に使うかと思えば落ちた場所で座ってみたり背中から倒れて逃げるためのきっかけに使ってみたり、と、このあたりは2010年の今でもジャッキーがお家芸にしているスタイルだが、動きの機敏さという意味で本篇には及ばない。

 そして、身体能力を巧みに活かした、コミカルなやり取りがふんだんにあるのも魅力だ。酒場ではドラゴンとジャガーが互いに椅子を使って殴り合ったあと、柱の陰に隠れて痛みに身悶えたかと思えば、ふたたび相まみえたときには平静を装ってみる。終盤、海賊たちのアジトである島に潜入したあとの、警察たちとコソ泥・フェイとのやり取りなどはその最たるものだろう。

 如何にも古びたコメディ的な芝居や演出は人によってはかなり鼻につくだろうし、あの締め括り方に煮え切らないものを感じてしまう人もあるだろう。ただ、恐らくはそんな印象を抱いたとしても、全篇に亘って盛り込まれた超絶技巧のアクションに魅せられて、観終わったあとには「面白かった」という感想をまず口にしてしまう、そういう“問答無用”の魅力が漲る作品である。たぶん今となっては、却って作れない類の映画に違いない。

関連作品:

メダリオン

香港国際警察 NEW POLICE STORY

ラッシュアワー3

ドラゴン・キングダム

新宿インシデント

ダブル・ミッション

ベスト・キッド(吹替版)

ラスト・ソルジャー

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