『キャビン・フィーバー』

キャビン・フィーバー スペシャル・エディション [DVD]

原題:“Cabin Fever” / 監督・原案:イーライ・ロス / 脚本:イーライ・ロス、ランディ・パールスタイン / 製作:イーライ・ロスエヴァン・アストロウスキー、サム・フローリッチ、ローレン・モウズ / 製作総指揮:スーザン・ジャクソン / 撮影監督:スコット・キーヴァン / プロダクション・デザイナー:フランコ=ジャコモ・カーボーン / 編集:ライアン・フォルシー / 衣装:パロマ・ソルダド / 特殊メイクスーパーヴァイザー:ハワード・バーガー、グレゴリー・ニコテロ、ロバート・カーツマン / キャスティング:ジョー・アダムス、アイオ・デイヴィス / 音楽:アンジェロ・パダラメンティネイサン・バー / 出演:ライダー・ストロング、ジョーダン・ラッド、ジェームズ・デベロ、セリナ・ヴィンセント、ジョーイ・カーン、ジュゼッペ・アンドリュース、アリ・ヴァーヴィーン / 配給:Art Port

2002年アメリカ作品 / 上映時間:1時間33分 / 日本語字幕:? / R-15

2005年4月23日日本公開

2007年8月24日DVD日本最新盤発売 [bk1amazon]

DVDにて初見(2010/02/18)



[粗筋]

 大学を卒業したばかりのポール(ライダー・ストロング)は、4人の友人たちと共に、キャンプに赴いた。森の奥にある一軒のコテージを借りきって、酒にドラッグに溺れ、騒ぎまくるはずだった。

 しかし、コテージに到着したその日、彼らの目論見は一瞬で大きく狂わされる。夜更けに突然ドアを叩き、助けを求めてきた男がきっかけだった――彼は明らかに、何らかの感染症を患っていた。ポールたちは関わり合いになることを避けて彼を閉め出したが、男はポールたちの車に乗って、吐血を撒き散らした。阿鼻叫喚の騒動の末、ポールたちは男に火をつけて、ようやく追い払う。

 夜が明けて、凄惨な有様となった車をポールたちが掃除しているあいだ、バート(ジェームズ・デベロ)とジェフ(ジョーイ・カーン)はレッカー車を呼ぶべく、連絡手段を探して遠出した。辿り着いた精肉工場で、だが2人はあることに気づき、ほうほうの体で逃げ帰る。そこには、前夜彼らのコテージを訪ねたあの男の写真が掲げられていたのだ。

 帰ることは出来ず、対処の方法も解らない。途方に暮れる彼らの身に、やがて本当の恐怖が降りかかる――カレン(ジョーダン・ラッド)が、発症したのだ。

[感想]

 のちに『ホステル』でゴア映画愛好家を熱狂させることとなるイーライ・ロス出世作である。

 出だしの描き方は、無鉄砲な若者グループが旅先で思わぬ恐怖に遭遇する……という、『悪魔のいけにえ』のパターンを踏襲したようなイメージだ。しかし、途中からはそこにゾンビ映画に近い、感染の恐怖が組み込まれている。アイディアとしてはほぼそれだけに等しいのだが、このひと工夫によって本篇は、観る者によって異色の手触りを感じさせる仕上がりになった。

 ただ、如何せん、低予算で作られているせいもあるのだろう、起用されている俳優はいずれもあまり達者とは言い難く、映像的にも突出した印象をもたらす場面がないだけに、描写の組み合わせが醸し出す異様さにあまり惹かれない観客にとっては有り体の作品、むしろ製作費が限られているために陳腐な作品に見えてしまうのがもったいない。それでも、中心にいる若者たちが脅威に対する姿勢に変化を施したり、被害を拡大する原因の描き方に独自の趣向が凝らされていて、決して安易なアイディア、映像の積み重ねではないことはよく考えれば解るのだが、伝わりづらいことは否めないところだ。

 また私感ながら、感染の原因が判明する過程をもう少し巧みに操っていれば、終盤手前でサプライズを仕掛けることも可能であり、もうひとつ強烈なインパクトを付け添えることが出来たのを、敢えてなのか気づかずになのか、工夫を怠っているのが惜しまれる。この要素は実質的に作品全体を支配しているだけに、もっと活かすべきではなかったか、と思う。

 とはいえ、既存のモチーフを巧みに再構築して、既視感がありながらも異なった手触り、恐怖を表現した手管は見事で、本篇によって注目を集め大きな作品に携わるようになっていたことも納得できる。特に、本篇に続く『ホステル』シリーズでも顕著な、クライマックスの衝撃、異様な後味を観客に与える技はこの作品で既に完成されており、映像作家としてのスタイルを充分に感じさせる、万全の出世作と言っていいだろう。

 なお、『ホステル』などに較べるとグロテスクさは抑えめで取っつきやすい――ように見えるが、しかし描かれる恐怖の身近さ、えぐみは決して『ホステル』シリーズに劣らない。

 ちなみにこの作品、続篇が制作されている。但し、1作目の立役者たるイーライ・ロスは少なくとも表立って携わった形跡はなく、日本では劇場公開なしで4月にDVDリリースされることが決定している――これだけで充分危険な香りがするが、とりあえず私は発売後、なるべく早いうちに鑑賞してみたい、と思う。

関連作品:

ホステル

ホステル2

グラインドハウス

イングロリアス・バスターズ

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