『REC/レック2』

『REC/レック2』

原題:“[REC2]” / 監督:ジャウマ・バラゲロ、パコ・プラサ / 脚本:ジャウマ・バラゲロ、パコ・プラサ、マヌー・ディアス / 製作:フリオ・フェルナンデス / 製作総指揮:カルロス・フェルナンデス / 撮影監督:パブロ・ロッソ / 美術:ヘマ・ファウリア / 視覚効果:アレックス・ヴィリャグラサ / 特殊メイク:ダヴィ・アンビット / 編集:ダヴィガリャルト / 衣装:グロリア・ヴィゲル / キャスティング:クリスティナ・カンポス / 音楽:ハビ・マス / 作曲:カルロス・アン / 出演:ジョナサン・メイヨール、オスカル・サンチェス・サフラ、アリエル・カサス、アレハンドロ・カサセカ、パブロ・ロッソ、ラファ・パラ、ペップ・モリナ、アンドレア・ロス、アレックス・バトジョリ、パウ・ポチョ、フェリ・ファブレガス、ハビエル・ボテト、ニコ・バイジャス、マニュエラ・ヴェラスコ / 配給:Broadmedia Studios

2009年スペイン作品 / 上映時間:1時間25分 / 日本語字幕:岡田壯平 / R-15+

2009年10月24日日本公開

公式サイト : http://www.rec2movie.jp/

ユナイテッド・シネマ豊洲にて初見(2009/10/24)



[粗筋]

 ――バルセロナ郊外にあるアパートで、謎の感染騒ぎが通報されて、およそ2時間後。

 全体をビニールシートで覆われ、異様な姿を晒したアパートに、SWATが到着した。チーフ(オスカル・サンチェス・サフラ)以下4人のメンバーはそれぞれヘルメットにCCDを固定、ロッソ(パブロ・ロッソ)の抱えるカメラでその視界を確認することが出来る仕様になっている。アパートに潜入したのち、それらのカメラで捉えられた映像をすべて記録することが義務づけられていた。

 事態の専門家であるというオーウェン博士(ジョナサン・メイヨール)の指示を仰ぐよう命じられて、SWATはアパート内に潜入する。まず感染源を調査することとなり、一同は血痕に彩られた壮絶な階段を最上階へ向かって上がっていった。

 最上階の部屋は、不気味な様相を呈していた。壁一面に張られた写真や生地、テーブルの上には不可解な機材が所狭しと並んでいる。ロッソに命じてあらゆるものを撮影させる傍ら、オーウェン博士は周囲の痕跡を探り、何かを必死に探していた。

 その矢先、静まり返っていたアパート内で、激しい物音が響き渡った。SWATの一員マルトス(アレハンドロ・カサセカ)が先行して階段を下り、物音のした部屋の確認をしていると、彼のヘルメットに取り付けられたCCDが、襲い来る女の姿を撮しだして――突如、画像が途切れた。

 追って部屋に入ったチーフたちが目撃したのは、ボロボロをまとい全身血まみれになり、異様に黒ずんだ目で一同を睨みつける女と、様相の一変したマルトス。奇妙な咆哮を上げ、襲いかかってくるマルトスにチーフたちが往生していると、オーウェン博士は何か不可解な言葉をマルトスに投げかけた。呻き、急に大人しくなったマルトスを一室に閉じ込めると、オーウェンはドアに十字架のペンダントを突き立てる。先ほどまで、SWATが手こずるほどに暴れていたマルトスが、たったそれだけの“儀式”で見事に静かになってしまった。

 同僚の異変で動揺を強めるチーフたちに、オーウェン博士は最上階の調査を続けるよう指示する。そして、このアパートを侵蝕した恐るべき病原の正体を、初めて明かすのだった……

[感想]

 近年、登場人物のひとりが構えた、という体裁の映像で構成された映画がたびたび作られるようになった。とりわけ、スペインの俊英監督ふたりが作りあげた『REC/レック』は観る者がゾンビ映画のまっただ中に身を置いているような驚異的な臨場感を醸成し、ホラー映画愛好家の琴線を激しく震わせた傑作であった。この作品の世界的な大ヒットを受けて製作されたのが、本篇である。

 だが、前作の終盤で提示された要素が気にくわなかった人は、序盤でいささか苦い気分を味わうかも知れない。物語のラスト、最上階にちりばめられていたオカルト的なモチーフが、仄めかしに留まらず、本格的に膨らまされて活用されているからだ。前作で犠牲となった人々が“感染者”として跋扈するアパートで、前作を上回る殺戮が繰り広げられることを期待していると、思ったよりも穏当で、明後日に話が転がってしまった、と感じるだろう。

 しかし実際のところ、検証してみれば解ることだが、本篇は決して間違った道に進んでいったわけではない。本篇で提示される原因、“感染者”の特徴的な行動を拾っていくと、前作で不自然だった点の幾つかに説明がつくことに気づくはずだ。詳述は避けるが、特に際立つのは、アパートが封鎖されるきっかけになった、つまり“感染”を政府が知ることになったきっかけを作った一家の娘――彼女の行動にあった違和感が、本篇で示された背景、設定を敷衍することで、説明できてしまうのだ。

 続篇を作ることまで想定していたかは謎だが、少なくとも製作者がきちんと設定を組んだうえで前作の物語をまとめていたことは解る。そして、そこで語らなかった真実があるのだから、それをベースに続篇を作るのはごく自然な話だ。“感染者”というモチーフからシンプルに、主観視点で描くゾンビ物を第1作に期待し、第2作でもその想いを引きずった方には気の毒だが、本篇は本来描くべき主題をきちんと取り扱っている。

 しかも本篇は、前作のある描写を発展させて、異色の仕掛けを作りだし、クライマックスでふたたび緊迫感を高めている。映像的には近しいのだが、その意味合いが違うために、漂う雰囲気もおのずと異なっている。

 クライマックスもそうだが、本篇は前作以上に、登場人物が自ら構えたカメラで撮影している、という事実が重要な意味を持っている。本篇の場合、前作では1台しかなかったカメラが複数用意されることで、見せ方自体も幅が拡がっているうえ、物語にとっても重要な情報の位置関係を巧妙にコントロールしているのだ。手法の点で前作を踏襲しながらも、それを更に乗り越えようとする意欲にはただ敬服するしかない。

 嫌味も幾つかあるにはある。“感染者”たちの見せ方については前作以上のものを示せていないこともそうだが、前作で重要な役割を演じたものを再登場させた理由がかなり解り易い点も物足りなさが残る。何より、どうしても前作を観ておかないと充分に楽しめない、その良さが伝わりにくいのがいちばんのネックだ。

 だが前作と併せて観ることで、前作の端整さを改めて保証し、更に別種の興奮と恐怖とをもたらしてくれる本篇は、間違いなくホラー映画史に名を残す傑作であると思う。合わせても3時間程度なのだから、未見の方は是非とも前作と続けて鑑賞していただきたい。

関連作品:

REC/レック

REC:レック/ザ・クアランティン

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