『放送禁止4 恐怖の隣人トラブル』

放送禁止4 恐怖の隣人戦争 [DVD]

監督・脚本・企画:長江俊和 / プロデューサー:春名剛生(フジテレビ)、角井英之 / 撮影監督:平尾徹 / VE:津田欽吾 / 編集:宮部真也 / 音響効果:小堀博孝 / 出演:犬塚浩 / ナレーター:鈴木ゆうこ / 制作:フジテレビ、イースト / DVD発売元:Pony Canyon

2005年日本作品 / 上映時間:46分

2005年10月13日フジテレビ系列にて放映

2008年8月20日DVD最新盤発売 [bk1amazon]

DVDにて初見(2009/07/30)



[粗筋]

 2003年9月、取材スタッフは郊外の一軒家に暮らす森下家を訪ねる。当時彼らは、隣に住むUという女性からの執拗な厭がらせに悩まされていた。庭にゴミをばらまかれ、菜園は薬のようなものを撒かれて台無しにされ、留守にすると途端に誹謗中傷のビラを玄関に貼りつけられ……。

 夫婦へのインタビューの最中にも窓ガラスが割られる、という事件が起き、スタッフはUさんが厭がらせを行っている姿を証拠として押さえるべく、庭、玄関先、そしてUさん宅の庭方向へとそれぞれ隠しカメラを設置して撮影を試みた。結果、すべての行為を捉えることに成功する。

 ここでスタッフはいちどUさんにも直接話を訊くことにした。最初は水を撒かれ追い返されたが、辛抱強い説得の結果、ようやくUさんの家に上がることを許される。そこでUさんが口にした“動機”は、異様なものであった……。

[感想]

 前作『ストーカー地獄編』に続き、一時期夕方のニュースショーなどで頻繁に採り上げられた隣人トラブルを題材としている。

 だが、隠された背景の方向性がだいぶ異なっているせいか、印象も違ったものとなっている。詳しくは語れないが、第3作とは別のエピソードに近い手触りである。

 作を追うごとにドキュメンタリーっぽく見せかける技術は確実に向上しており、本篇のカメラの動きにはほとんど違和感がない。森下家の奥さんが感情を顕わにする部分がいささか唐突であったり、報道に使う目的だったと思われる取材様式のわりには、取材を受ける側が「ここからは撮さないで」と請うたりわざわざスタッフから距離を置いたところへカメラを持っていって撮影を続ける無神経さが気になりはするが、許容できないほど乱暴な作りではない。

 引っ掛かるのは、やはり仄めかされた背景と、そのために取ったと思われる行動とにところどころ矛盾が生じていることだ。第2作、第3作にも同様の欠点が見受けられ、それに較べると若干理由付けは出来る性質のものだが、不自然な印象は否めない。

 また、このシリーズにはそういう癖があるようだが、何故かヒントを出してはいけない人がヒントを出している、という描写があるのが引っ掛かる。本篇も、終盤で起きる出来事に関する仄めかしが鏤められているのだが、その結果として描写から背景を探るというよりはクイズのような感覚を観る側に齎してしまっている。むろん、そういう仕掛け自体は観ていて解き明かす楽しみがあるので否定はしないが、個人的には折角、放送不可能となったドキュメンタリーという体裁を取っている以上、もう一歩踏み込んでリアリティを醸成して欲しい、と思ってしまうのである。

 趣向自体が目敏い人間には見抜きやすくなっているのに加えて、ラストで背景を想像する手懸かりとなる描写を反復したりもしているので、前3作よりも解り易く感じられる作りだ。シリーズを順に追っている人間ほど、平明になっていくのが残念に感じられるかも知れないが、このスタイルを如何に視聴者に愉しんでもらうか、絶えず試行錯誤を繰り返している現れだと思われるので、私はその点まで含めて評価したい。製作者のサービス精神ゆえの遊戯性が、ドキュメンタリー方式を採用したことによるリアリティと充分に相容れない状態になっているのが気懸かりであり残念でもあるのだが、むしろこのまま突き進んでいって、いつか両者を見事に調和させた傑作を生んでくれることを願いたい――2008年・2009年と劇場版が続いて、本来のスタイルである地上波放送による新作がないのが、その意味では気になるのだけれど。

関連作品:

放送禁止

放送禁止2 ある呪われた大家族

放送禁止3 ストーカー地獄編

ニッポンの大家族 Saiko! The Large Family 放送禁止 劇場版

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