『墓場鬼太郎』第十一話 アホな男

 例によって収入に困った鬼太郎は、“あの世保険”なるものを売り始める。あの世での幸福を約束する内容を売り込む鬼太郎に対し、ねずみ男は堅実を志して毛生え薬を売り出した。が、この毛生え薬を服用したヤクザの組長が、瀕死の状態から恢復したことで、話は妙な方向へ……

 なんか久々に目が醒めたように実験的な演出を繰り出してきてます。感情表現を辞書風に説明してみたり、瀕死の状態から恢復した老人の活力を表現する手法とか、異様な凝りっぷりに見ていてときめいてしまった。

 どうも今回も無軌道な話運びだなー、と思っていたら着地は思いの外見事でした。この、それぞれのスタンスで異なる人間世界というものに対する捉え方が、『墓場鬼太郎』というものの主題だったのでしょう。この中からごく一部の、清廉な箇所を抜き出すと『ゲゲゲの鬼太郎』になる。『墓場鬼太郎』における鬼太郎は非常に意地汚いキャラクターですが、この主題のなかでは実に活き活きしています。

 最後のカットは彼らがそのまんま現在まで、社会の片隅で生きていることを感じさせて良し。『モノノ怪』で培った先端的な表現手法を駆使して、良さも悪さも含めて作品の空気を見事に再現した良いシリーズでした。……話の破綻がどーしても肌に合わない気がしてDVDを買うかは未だに迷っていたりしますが、とりあえず観ていて楽しかったのは確か。続編があったら確実に観ます。……なんかかなりの高率でありそうな気がするんだが。

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