『アドレナリン』

原題:“Crank” / 監督・脚本:マーク・ネヴェルダインブライアン・テイラー / 製作:トム・ローゼンバーグ、ゲイリー・ルチェッシ、リチャード・ライト / プロデューサー:スキップ・ウィリアムソン、マイケル・デイヴィス / 製作総指揮:デヴィッド・スコット・ルービン、エリック・リード、マイケル・パセオネック、ピーター・ブロック / 撮影監督:アダム・ビドル / プロダクション・デザイナー:ジェリー・フレミング / 編集:ブライアン・バーダン,A.C.E. / 衣装デザイナー:クリストファー・ローレンス / 音楽:ポール・ハスリンジャー / 特殊効果スーパーヴァイザー:マット・クッチャー / 出演:ジェイソン・ステイサムエイミー・スマート、ホセ・パブロ・カンティーロ、エフレン・ラミレッツ、ドワイト・ヨーカム、カルロス・サンツ、ジェイ・エクスカーラ、キーオニー・ヤング / 配給:MOVIE-EYE

2006年アメリカ作品 / 上映時間:1時間34分 / 日本語字幕:風間綾平

2007年07月07日日本公開

2007年11月23日DVD日本盤発売 [amazon]

公式サイト : http://www.adrenaline-movie.com/

ユナイテッド・シネマ豊洲にて初見(2007/07/07)



[粗筋]

 殺し屋のシェブ・チェリオス(ジェイソン・ステイサム)は、異様な状態で目醒めた。意識は朦朧とし、心臓の鼓動はいまにも途絶えそうに心許ない。テレビの前には“Fuck You”と記したDVD−Rが残されていた。そこに映っていたのは、同業者ヴェローナ(ホセ・パブロ・カンティーロ)が自分に毒薬を打つ姿。中国製の特殊な毒は一時間足らずでシェブを死に追いやると、映像のなかでヴェローナは得々と語った。

 激昂し家を飛び出したシェブ。裏の世界で彼の主治医を務めるドク・マイルス(ドワイト・ヨーカム)が特定したその毒の特性は、脳内にアドレナリンを生じさせることにより緩和できるというもの。かくして、生き残るため――晴れて裏稼業から足を洗い婚約者イヴ(エイミー・スマート)と平穏な暮らしを得るために、シェブは西海岸を疾走する――

[感想]

 アイディアだけでほぼ勝利確定、そこに当代きってのダーティ・アクション・ヒーローとしての地歩を確立しつつあるジェイソン・ステイサムをあてがっただけでほぼ8割方成功は保証されたようなものだ、と感じていた。非常に期待しての鑑賞だったが、ものの見事にそれさえ上回ってくれた。感動するくらいの弾けっぷりである。

 出だしで心拍の低下により意識朦朧とした主人公の視界を再現し、その窮地を解り易く観客に伝えると、次の瞬間から主人公の暴走は始まる。もともと血の気の多そうな男が、そりゃ「余命あと一時間よ」と言われたら、何とか生き延びようとすると同時に相手を殺しに行きたくなって当然だろう。こうして一気に作品本来の流れに観客を投げ込むと、あとは随所に背後関係を鏤めつつ、アドレナリンを上昇させるシチュエーションをひたすら盛り込んでいけばいい。これほど解り易く、しかもシチュエーションさえ踏まえていれば興奮しないわけがない、と断言できる設定もそうそう存在しない。

 この熱狂的で混乱した状況を描き出すうえで、監督の傑出したヴィジュアル・センスが実によく役立っている。分割画面の多様にコマ送り、早送り、オーバーラップなど多彩な趣向を駆使して物語のスピード感や闇雲な力強さを巧く演出しているのである。単純に展開のためだけにでなく、“顔の前に文字が出る”という映像的なお遊びに凝ってみたりして、楽しませることも忘れていない。

 物語の面で、背後関係についてはあまり凝らず、どんでん返しもシンプルにしている点も、スピード感に奉仕している。ああいう毒薬を用いることに過剰に理由付けをしないことで、あまり深く考えず、主人公の右往左往を堪能できるのだ。そのくせ、生死を左右する剣呑な状況であるにも拘わらず、こうしたスピード感やユーモアによって悲壮感を外に追いやり、いっそ“生”を謳歌しているように感じさせるあたりこそ、本編の優秀な点だろう。主人公自身が、最後までその状況を楽しんでいるようにさえ見えるのは凄い。

 如何せん、生き死にがかかっている分、主人公のみならず周囲も暴力性がいや増し、かなりえぐい場面も多数あり、またそういう状況をユーモアで彩る作り方は、受け入れがたい方もあるはずで安易にはお薦めできない。しかし、それを受け入れられるなら、登場人物同様に終始“イカレた”ノリに痺れっぱなしになることの出来る傑作である。いやあ、ジェイソン・ステイサムは本当にいい。

コメント

タイトルとURLをコピーしました